複素解析

R言語による等角写像のグラフ化

R言語は複素数型を扱えるので、複素解析のお勉強に大変便利である。 とおくと、で定義される写像は、単位円を単位円に写す。 昨日定義した上の写像hは、単位円を単位円に写すらしいが、本当かどうかR言語で確認してみる。まず w = h(z)を定義。 #等角写像 w …

有理型関数と有理関数

ちょっとメモ。 有理型関数と有理関数は異なる。 有理関数は多項式の分数で表される関数。 有理型関数は真性特異点を持たず、正則でない点においても「たかだか極」であって、その極全体の集合が離散(有限ではなくともよい?*1 )であること。 ところで連続し…

複素接ベクトル空間(2)

をリーマン面X上の点Pの属する座標近傍系とする。 を実部虚部にわけて と表す。このとき z はV上の関数である。そして、V 上の点 Qに対して を対応させる関数 はとなり、これも V 上の関数となる。 の代わりに を使うと見通しがよくなる。 と定義する。 は …

複素接ベクトル空間

X をリーマン面とし、P ∈ X とする。以下 X と P を固定する。 f を Pの近傍 V で定義された複素数値 級関数とする。 そして級関数 f とその定義域のセット を考える。このような 級関数とその定義域の対全体の集合を考え、それを という記号で表す。 の2つ…

コンパクトリーマン面上の正則写像

読んでいたテキスト、高橋「複素解析」は読み難くなってきたので別のテキストに乗り換えることにした。調べてみたところ、小木曽著「代数曲線論」(朝倉書店)の第2〜3章あたりが同じ話題をもう少し詳しく論じている感じがしたので、しばらくこちらに乗り換え…

リーマン面上の微分形式の積分

次に リーマン面 X 上の微分形式の積分を定義する。 をリーマン面 X 上の微分可能な曲線とする。 の定義区間を十分細かくして とし、各 が X の 1つの局所座標 にふくまれるようにする。 X 上の微分形式 ωの γ上の積分 を以下のように定義する。 ω = f dg と…

リーマン面上の微分形式(2)

リーマン面 X 上の正則関数 f を "微分する" ということを考え直してみる。 に対し と がaの局所座標となっているとし、に関する座標を z, に関する座標を w で表すことにする。 , とする。f を リーマン面 X 上の正則関数とする。 f を元に 上の関数 F を …

リーマン面上の微分形式

複素平面上での正則関数について成り立つ性質は、コーシーの積分定理が成立することによるものが多かった。リーマン面上でもこれは同様らしく、そうすると正則関数(あるいは有理型関数)のリーマン面上の曲線に沿った積分というものを考える必要がでてくる。 …

リーマン面上の正則/有理型写像の性質いくつか

定理5.13(p123) X,Yがリーマン面、f:X→Y が(定点写像でない)正則写像とすると、 f(a) = b となる a∈X, b∈Y に対して、 a のまわりの局所座標とbのまわりの局所座標と1以上の自然数k で以下の(1)〜(3)を満たすものが存在する。 (1) (2) (3) f はという形に局…

リーマン面上の有理型関数

リーマン面 X の開集合 U 上の関数fが有理型であるとは以下のように定義される。 U の粗な部分集合 P が存在し、 (i) f は U - P で正則。 (ii) ∀a∈P に対し P の各点を f の極と呼ぶ。これも通常の複素平面上の定義と同じように見える。

リーマン面上の正則関数(2)

リーマン面上の正則関数の定義に従うと、リーマン面 X の開集合 U 上で定義された局所座標関数は U 上の正則関数となる。 通常の複素平面の領域上の正則関数に関する多くの性質が、そのままリーマン面上の領域でも成り立つとのことで、テキストでは以下の例…

リーマン面上の正則関数

をリーマン面とする。X から Y への写像 を考える。 X の 1点 a をとり、 とし、a, b はそれぞれ座標近傍 に含まれているとする。 すると、写像 を介して、 の開集合から の開集合への写像 が定義できる。この写像は の近傍で定義されており、 に値をとる。 …

リーマン面

第5章§4「リーマン面」に入る。 テキストではこの§は 詳細に立ち入ることなく、この概念についての解説をこの節では試みる。 とあり、証明抜きでいろいろな面白そうな話題が載っているので、気楽にむずかしいところは流しながら読み進めていくことにする。リ…

リーマンの写像定理(6)

補題ばかりでなかなか本来の目的地にたどりつけないが、今後こそ最後の補題。もうすぐゴール。 補題8(p119) Dは単連結な開集合とする。 のとき、D上の正則関数の空間 上の関数 は、(前にに入れた距離による位相に関して)連続関数である。 証明は、距離空間に…

リーマンの写像定理(5)

昨日の主張を補題としてまとめると以下のようになる。この証明をフォローする。補題7(p118) Dを単連結開集合で であるとする。 ある が存在し、 に対して が成立すれば、 は D から D(0;1)への解析同型である。 が D から D(0;1)への解析同型でないと仮定す…

リーマンの写像定理(4)

とりあえずリーマンの写像定理を証明するまでは続けることにする。さて、なる0を含む単連結領域D が与えられたとき、D から単位開円板D(0;1)の中への正則写像 f で f(0) = 0 となるものを考える。このような f の全体をと書くことにする。 D から D(0;1)への…

リーマンの写像定理(3)

D を単連結な開集合で、とする。補題6(p117) D からある有界な単連結領域への同型が存在する。 Dに含まれない複素数 a をとり関数を考える。 この関数 f は D で零点を持たないから、前にやった定理3.6(a⇒f)を使うと、なるDで正則な関数 g が存在することが…

リーマンの写像定理(2)

問3(p116) 単位円板 B の自己同型で、Bの1点 a にたいして、条件 および を満たすものが唯1つ存在することを証明せよ。 まずこの問題を解いてみる。 は Bの点aを0に写す自己同型であり、 より であるから、少なくとも一つは条件を満たすBの自己同型は存在す…

リーマンの写像定理

次にテキスト(高橋礼司「複素解析」)第5章§3「リーマンの写像定理」(p116〜)に入る。またてこずりそうだ。 §3に入る前に、§2の最後に次の問題がある。問3(p116) 単位円板 B の自己同型で、D *1の1点 a にたいして、条件 および を満たすものが唯1つ存在する…

単位円板D(0;1)の自己同型群(5)

昨日は 上半平面 P の自己同型群 Aut(P)をようやく求めることができたが、最終目標は 単位円板 B = D(0;1) の自己同型群 Aut(B) を求めることなので、もう少し苦労が必要。 さんざんやっているように、Cayley変換 f を介して、Aut(P) と Aut(B) が同型である…

単位円板D(0;1)の自己同型群(4)

今度こそ上半平面Pの自己同型群を求める。 テキストは発見的にAut(P)を見つけたのではなく、天下りに が与えられ、G = Aut(P)を確かめるという手順で進んでいるようだ。 G ⊂ Aut(P) は簡単に確かめられるが、逆を示すのがめんどう。これは G が P に推移的に…

単位円板D(0;1)の自己同型群(3)

上半平面の自己同型群Aut(P)を求めるところからやり直し。 ひっかかっていたところをていねいに見直してみる。まず (はリーマン球面)である。そして前にやったようには1次分数変換全体であった。 このことから P の解析的自己同型も1次分数変換に限られる(す…

単位円板D(0;1)の自己同型群(つづき)

まだしばらくかかりそう。 上半平面Pの自己同型群を利用して、単位円板 D(0;1)の自己同型群を求めるという手順らしい。 記号の整理と自己同型群を求めるまでのあらすじをまとめておく。 記号 上半平面 単位円板 上半平面から単位円板への解析的同型写像(Cayl…

単位円板D(0;1)の自己同型群

次は単位円板D(0;1)。 この自己同型群を求めるのは少し道中が長い。 まずは演習問題(p115問1)の形で補題が与えられているので、これを解く。 問1は一つにまとまっているが内容的には3つに分かれるので(1)〜(3)としておく。 問1(1) 1次分数変換 は実数軸 を …

リーマン球の自己同型群

つぎにリーマン球の自己同型群を計算してみる。のとき という対応はからへの写像となる。これを1次分数変換(または略して1次変換)という。上の1次分数変換全体の集合をGとする。 実は が成り立つという。これは、G がに推移的に作用することと、の元∞を固定…

複素平面Cの自己同型群

はじめにの複素解析的自己同型群を求める。求めようとして、まだ解析関数のことをよく理解していないことに気づいたので復習しながらトライしてみる。 の自己同型fは全平面で正則だから、とくに0において収束半径∞のテイラー級数に展開できる。 この級数展開…

(複素解析的)同型

平面上の開集合D,D'に対して、DからD'への1:1両連続な写像(位相同型)fで、f がDで正則、がD'で正則なものを DからD'への(複素解析的)同型という。逆写像定理より、f'(a)≠0 となる a∈Dの近傍Uでfは1:1両連続となり、も正則となった。これを使うと、連結な開集…

逆写像定理

続いて§2「写像としての正則関数」(p109〜116)に入る。この§ではD上の正則関数をDからf(D)への写像としてみたときの性質が調べられるようでおもしろそうだ。 最初は逆写像定理。可微分多様体における級写像の逆関数定理と感じが似ている。 領域Dで定義された…

モンテルの定理

第5章§1「正則関数列の収束」が何とか最後までたどりついた。新しい概念が多かったので整理しながらもう一度復習してみる。D上の正則関数の集合をと書く。この§の目的は以下のモンテルの定理の証明であったようだ。(後の§で使われる) モンテルの定理 の任意…

C(D)に距離を入れる(3)

id:kame_math:20060411 で定義した距離dは次の性質を持つ。定理5.3(p104) の点列に対して、次の2つは同値 はDで に広義一様収束する。 定理5.4(p105) は距離dに関して完備。 証明の論理を追うこと自体は容易。 距離dに関する収束が Dにおける広義一様収束と…