モンテルの定理
第5章§1「正則関数列の収束」が何とか最後までたどりついた。新しい概念が多かったので整理しながらもう一度復習してみる。
D上の正則関数の集合をと書く。この§の目的は以下のモンテルの定理の証明であったようだ。(後の§で使われる)
モンテルの定理
の任意の部分集合に関して以下の2つは同値。
距離空間Xが完全有界であるとは、任意のε>0に対してX全体を有限個の半径εの球で覆えることと定義され、これは(距離空間では)任意の点列がCauchy列である部分列を持つことと同値(テキストの付録Iに証明がある)。
すると X が完全有界+完備なら X の任意の点列が収束部分列を持つ(これを点列コンパクトという)ことになる。
は距離dに関して完備であることが示されているので、上のモンテルの定理のが距離d に関して完全有界であるというここと、の任意の点列が収束部分列を持つことが同値となる。
任意の点列が広義一様収束部分列を持つようなの部分集合を正規族という。における広義一様収束は距離d に関する収束と同値だったので、モンテルの定理の(a)は
- (a') は正規族
という表現に置き換えることもできる。
モンテルの定理の証明
この定理を証明するためにいろいろな定義や定理、補題が準備されているがそれをさかのぼりながら証明の概略をまとめてみる。
まず(a)⇒(b)の証明について。
(a)を仮定してが Dの任意のコンパクト集合上で一様に有界であることを示す。
KをDの任意のコンパクト部分集合とする。
(a)の距離dに関して完全有界であるということが、Dの任意のコンパクト集合上完全有界であることに同値であること(定理5.5)を利用すると、上でとったKに関して、はK上完全有界。
コンパクト集合K上完全有界の定義を復習すると、
∀ε>0に対し有限個のが存在して、に対して j(1〜mのどれか)があり、
とできる。
そこでεとしてとくに1(別に他の値でもかまわない)をとると、あるjがあって
はコンパクト集合K上で連続だからK上有界(zによらないMで押さえられる)。よって
zによらず1+Mで押さえられるからはK上一様有界である。
次に(b)⇒(a)。
の部分集合に関しては、この前の定理で
が証明されている。これを利用すると(b)が成立することから各点で有界なので、各点で同程度連続であることを証明すればよい。それを証明するのに Cauchyの積分表示を利用する。(いまの元はDで正則である)
∀a∈Dに対し、十分小さなr>0をとると中心a半径rの閉円板がDに含まれるようにできる。はコンパクトだから仮定(b)よりこの上で一様有界、すなわち任意のはfによらないMにより
となる。
またfはで正則だから特にを満たすzに対し、Cauchyの積分表示
が成り立つ(とする)。
がaで同程度連続であることを示すには、任意のε>0に対し、fがaの十分近い近傍でであることを示せばよい。
よってOK。