リーマン面上の微分形式

複素平面上での正則関数について成り立つ性質は、コーシーの積分定理が成立することによるものが多かった。リーマン面上でもこれは同様らしく、そうすると正則関数(あるいは有理型関数)のリーマン面上の曲線に沿った積分というものを考える必要がでてくる。
ところが、リーマン面では座標表示は局所的にしかできないので、大域的な曲線に沿った関数の積分はそのままでは定義できない。そこで、実微分可能多様体のときと同様に、微分形式を導入し、それの積分を考える。


リーマン面は複素1次元多様体であるから、1次の微分形式だけを考えればよいのだろう。

読んでいるテキスト「複素解析」(高橋礼司) ではリーマン面上の微分形式を、次のように見慣れない形で定義している。

リーマン面上の微分形式の定義

リーマン面X 上の有理型関数 f,g の組  \(f,g\) を考える。
 a \in X に対し a のまわりの局所座標  \(U, \varphi\) \varphi(a) = 0となるものをとり、この座標に関して a の近傍で f,g を局所座標表示したものを  F(z), G(z) とする。
さて、別の 有理型関数の組  \(f_1,g_1\) が与えられ、a の近傍で  F_1(z), G_1(z)と局所座標表示されるとする。
このとき、 \(f,g\) \(f_1,g_1\) が同値であることを、

 \displaystyle F(z) G'(z) = F_1(z) G_1'(z)    \(0 \lt |z| \lt r \)

が成り立つことと定義する。
この同値関係による同値類を、リーマン面X 上の (1次)微分形式と呼ぶそうな。

 \omega が X 上の (1次)微分形式で、 \(f,g\) \omega に属するとき、

 \displaystyle \omega = f dg

と書くそうだ。


なんだかわかりにくいので具体例を考えてみる。
 f(z) = z, g(z) = z^2 としてみよう。上の記号に従えば、z = 0 の近傍で、 F(z) = z, G(z) = z^2 と表される。
そして
 \displaystyle f dg = z d(z^2) = z 2z dz = 2 z^2 dz
ということか。なるほどたとえば  f_1(z) = z, g_1(z) = z^2 + 1 とすれば
 \displaystyle F(z) G'(z) = z \cdot (z^2)' = z \cdot 2z
 \displaystyle F_1(z) G_1'(z) = z \cdot (z^2+1) = z \cdot 2z
であるから
 \displaystyle F(z) G'(z) = F_1(z) G_1'(z)
すなわち、 (z, z^2) (z, z^2+1) は同値で、これらの属する同値類は  2z^2 dz を書かれるということか。