リーマンの写像定理(6)

補題ばかりでなかなか本来の目的地にたどりつけないが、今後こそ最後の補題。もうすぐゴール。


補題8(p119)

Dは単連結な開集合とする。
 a \in D のとき、D上の正則関数の空間 \cal{H}(D) 上の関数
 \displaystyle \varphi_a: \cal{H}(D) \ni f \mapsto f'(a) \in \mathbb{C}
は、(前に\cal{C}(D)に入れた距離による位相に関して)連続関数である。

証明は、距離空間 \cal{C}(D)における点列の収束が、Dに関する広義一様収束であることと同値なことと、Cauchyの積分公式による(ちょっとはしょりすぎかも)。

まとめ

D を単連結開集合で単位円板に含まれ、0 を含むものとする。
D で正則な関数 f で以下の4つの条件を満たすものの全体を  \cal{F}_0 とする。
(1) fは単葉
(2)  |f(z)| \lt 1 (z \in D)
(3)  f(0) = 0
(4)  |f'(0)| \ge 1


この後のあらすじは以下のようになる。
もし \cal{F}_0の元  f_0 で、 |f'_0(0)| \ge |f'(0)| for \forall f \in \cal{F}_0 となるものが存在することが示せると、補題7を利用することにより*1  f_0 が D から D(0;1) への解析同型を与えることが証明できる。すなわちリーマンの写像定理が成立する。
 \cal{F}_0 上の関数  \varphi(f) = f'(0)補題8により連続関数であった。そこで関数  \varphi の絶対値が \cal{F}_0のある点 f_0で最大値をとることを示せればよい。もし距離空間  \cal{F}_0がコンパクトなら、その上の連続関数は最大値をある点で取るので、 \cal{F}_0がコンパクトであることを証明することによって、リーマンの写像定理が成立することを示すという方法を取る。
§1 でやった正規族の理論によるMontelの定理を利用して、 \cal{F}_0がコンパクトであることを示すという方法を取る。その具体的な手順としては、

であることという性質を用いて、 \cal{F}_0 が完備であることと、完全有界であることを示せばよい。後者に関してMontelの定理から、 \cal{F}_0が閉かつ局所有界であることを示せばよい。
最大値の原理+フルビッツの定理を駆使することにより、 \cal{F}_0が閉かつ完備であることが示せる。
そして \cal{F}_0 が局所有界であることは容易にわかる。


以上でリーマンの写像定理はおしまい。

*1:補題7の条件には(1)と(4)がなかったのでテキストを鵜呑みにしてそのまま適用してよいものか悩み中