単位円板D(0;1)の自己同型群(5)
昨日は 上半平面 P の自己同型群 Aut(P)をようやく求めることができたが、最終目標は 単位円板 B = D(0;1) の自己同型群 Aut(B) を求めることなので、もう少し苦労が必要。
さんざんやっているように、Cayley変換 f を介して、Aut(P) と Aut(B) が同型であることがわかっている。復習のために再確認しておくと、
が Cayley変換。
Aut(P) と Aut(B) との間の同型は、
で与えられる。
Aut(P)の任意の元は によって決まる1次分数変換である。
Cayley変換 f およびその逆変換、それから Aut(P)の任意の元の形は具体的にわかっているから、あとはひたすら計算すればよいのだが、うっかりするとすぐ計算間違いしそうな、単純なめんどくさい肉体労働的計算をがまんして行わなければならない。テキストはこういうところをはしょって1,2ページの短い簡潔な説明にまとめているので、簡単だと誤解して読むとひどい目にあう。
計算が少しでも楽になるように、1次分数変換の合成による積と行列の積が対応することを利用して、行列計算を行うことにする。
まずCayley変換 を行列で表すと
となる。f の逆変換は上の逆行列で表せるから、
となる。
よって によって決まる P の自己同型に1:1に対応する B の自己同型を行列で表したものは、以下のように計算できる。
ここで、
とおくと、
と書くことができる。そして
が成立している。
そこで、
とおけば、
が示されたことになる。逆に任意のKに含まれる変換を与えたとき、
とおけば a,b,c,dはすべて実数で ad-bc=1 となるから より、
である。
一般に
という記号を使うそうであり、上で見たとおりこの群は SL(2,R)と同型になる。
そして、
ここまでで§2が終了。
リーマン球面における代表的な3つの単連結集合 の解析的自己同型群を決定することができた。