単位円板D(0;1)の自己同型群

次は単位円板D(0;1)。
この自己同型群を求めるのは少し道中が長い。
まずは演習問題(p115問1)の形で補題が与えられているので、これを解く。
問1は一つにまとまっているが内容的には3つに分かれるので(1)〜(3)としておく。


問1(1)

1次分数変換
\displaystyle w = \frac{z-i}{z+i}
は実数軸  Im(z)=0を 単位円周|w|=1に写す。

 \Phi(z)=\frac{z-i}{z+i}
 A = \{z\in\mathbb{C}\cup\{\infty\} | Im(z)=0\}
 B = \{w\in\mathbb{C} | |w|=1\}
と書くことにする。(実数軸と言ったとき無限遠点も含むものなのかよくわからないが)
この記号を使ったとき  \Phi(A) = Bを示せという問題。なので  \Phi(A) \subset B \Phi(A) \supset Bを示せばよい。
 w \in \Phi(A)ならあるz\in Aにより w = \frac{z-i}{z+i}となるが、zが∞でなければある実数xによりz=xと表せるから
 |w| = \|\frac{x-i}{x+i}\|=\frac{\sqrt{x^2+1}}{\sqrt{x^2+1}}=1
となる。z=∞かもしれない。その場合でも
 |w| = \|\frac{z-i}{z+i}\|=\|\frac{1-i/z}{1+i/z}\|=\|\frac{1-i/\infty}{1+i/\infty}\|=1
と考えればよく、w∈B が言える。ゆえに  \Phi(A) \subset B

逆に∀w∈Bをとり  w=\Phi(z)=\frac{z-i}{z+i}としてこれをzについて解く。w=u + iv (u,v∈R)とすると、ややめんどうな計算により w≠1 であれば
 \displaystyle z=\frac{-2v+(-u^2-v^2+1)i}{(u-1)^2+v^2}
となる。よって  u^2+v^2=1なら z は実数になるが、wは単位円上の点だからこれは成り立つ。ゆえに w≠1であればΦによりwに写される実軸上の点zがあることがわかった。
w=1のときは Φ(∞)=1 なので、∞も実軸上の点としてやれば w∈Φ(A)となる。ゆえに  \Phi(A) \supset Bである(証明終)。



問1(2)

1次分数変換
\displaystyle w = \frac{z-i}{z+i}
は上半平面 P=\{z|Im(z)\gt 0\}を 単位円板D(0;1)=\{w | |w|\lt 1\}に写す。

z=x+iy (x,y∈R)とすると
\displaystyle \|\Phi(z)\|^2=\frac{x^2+y^2+1-2y}{x^2+y^2+1+2y}
となるから、z∈Pならy>0より  \|\Phi(z)\|\lt 1となる。
変換Φは上半平面Pを単位円板の内部に写し、同様にして下半平面を単位円板の外部に写すこともわかる。(1)より実軸を単位円の円周に写す。
そして\Phi\in Aut(S^2)だからΦは双正則で単葉なので、Φの定義域をPに制限するとΦはPからD(0;1)への解析同型であることがわかる。



問1(3)

複素平面上に任意に2つの円または直線を与えたとき、その一つを他方に写す1次分数変換が存在する。

これは任意の3点の組(z_1,z_2,z_3), (w_1,w_2,w_3)が与えられたとき
 R(z_1)=w_1, R(z_2)=w_2, R(z_3)=w_3
と変換する1次変換が存在することから証明されるという。上のようなRの存在は、(w_1,w_2,w_3)として特に(1,0,\infty)という組をとったとき、
 \displaystyle S(z) = \frac{z-z_2}{z-z_3}/\frac{z_1-z_2}{z_1-z_3}
で定義される1次変換が(z_1,z_2,z_3)(1,0,\infty)に写すことが簡単に確かめられる。そこで(1,0,\infty)を介在させることにより証明される。
上のS(z)を複比と呼び、 S(z)=[z,z_1,z_2,z_3]という記号で表すそうだ。