コンパクトリーマン面上の正則写像

読んでいたテキスト、高橋「複素解析」は読み難くなってきたので別のテキストに乗り換えることにした。調べてみたところ、小木曽著「代数曲線論」(朝倉書店)の第2〜3章あたりが同じ話題をもう少し詳しく論じている感じがしたので、しばらくこちらに乗り換えてみる。


前にやったようにリーマン面XからYへの定点写像でない正則写像fは、局所的に  z \mapsto z^n という形の単位開円板間の n重写像で表されるという定理を証明した。X の点 P と f から上の n の値が決まるが、この正の整数 n をPにおけるfの分岐指数といい、 e_P と書くそうだ。(記号にfはどこへ行った?) ちなみに n は局所座標の取り方に依存せずに決まる。
 e_P \gt 1 となる点 P を f の分岐点と呼ぶ。

fの写像度(被覆次数)

X, Y をコンパクトリーマン面とし、f:X→Y を定点写像でない正則写像とする(このようなfを自明でない正則写像と呼ぶそうだ)。
このとき以下の2つが成り立つ。

(1)  \forall Q \in Y に対し  f^{-1}\(Q\) は空でない有限集合。

(2) fの分岐点は高々有限個。


上を仮定すると次のように fの写像度(被覆次数)と呼ばれる正整数が定義できる。
すなわち f^{-1}\(Q\) は空でない有限集合となり
 f^{-1}\(Q\) = \{P_1,\cdots,P_n\}
とおける。各 P_iにおける fの分岐指数を e_{P_i}とすると
 \displaystyle \sum^n_{i=1} e_{P_i}
は点Qによらず一定値となり、この値を f の写像度というとのこと。


疎に有限個しか存在しない分岐点を除けば、その点のまわりで w = z^nという形に書けて n:1 に P と Q=f(P)の近傍が対応する。z = 0 以外では zの近傍とQの近傍が ^n\sqrt{z}の分枝によって 1:1 に同型対応する。これを n重に被覆するというそうだが、ほとんどの場所で n重に被覆する写像fの写像度が n であるというように定義しているらしい。
fの分岐点とは、fを w = f(z) の形に座標表示したとき、f(z)=0 の重根であるような z で表されるような X の点のことをいい、その重複度+1 を分岐指数と呼ぶようだ。したがって、ほとんどすべての点においてはf の分岐指数は 1であることになる。