リーマン面上の微分形式(2)

リーマン面 X 上の正則関数 f を "微分する" ということを考え直してみる。

 a \in X に対し  \(U, \varphi\) \(V, \psi\) がaの局所座標となっているとし、 \(U, \varphi\)に関する座標を z,  \(V, \psi\) に関する座標を w で表すことにする。
 \Delta = \varphi(U),  \Gamma = \psi(V) とする。f を リーマン面 X 上の正則関数とする。
f を元に  \Delta 上の関数 F を
 F = f \circ \varphi^{-1}
 \Gamma 上の関数 G を
 G = f \circ \psi^{-1}
と定義する。
z から w への座標変換の関数  \Psi: \Delta \to \Gamma \Psi = \psi \circ  \varphi^{-1} とする。
このとき、
 \displaystyle F = G \circ \Psi
であるから、座標表示 z を持つ  \Delta 上の関数 F を z で微分してみると、微分の連鎖律によって以下が成り立つことがわかる:
( \varphi(a) = z_0, \psi(a) = w_0 とする)

 \displaystyle \begin{eqnarray} \( \frac{d(f \circ \varphi^{-1})}{dz} \)_{z_0} &= & \( \frac{dF}{dz} \)_{z_0} \\ &= & \( \frac{d(G\circ\Psi)}{dz} \)_{z_0} \\ &= & \( \frac{dG}{dw} \)_{\Psi(z_0)} \( \frac{dw}{dz} \)_{z_0} \\ &= & \( \frac{d(f \circ \psi^{-1})}{dw} \)_{w_0} \( \frac{dw}{dz} \)_{z_0} \end{eqnarray}

結果をまとめると、

 \displaystyle \( \frac{d(f \circ \varphi^{-1})}{dz} \)_{z_0} = \( \frac{d(f \circ \psi^{-1})}{dw} \)_{w_0} \( \frac{dw}{dz} \)_{z_0}

これをみると、"fの 導関数"を座標変換すると  \( \frac{dw}{dz} \)_{z_0} 倍だけ値が異なり、座標変換で不変でなくなりとても不便なことになる。
昨日やった微分形式の定義における奇妙な同値関係は、上のような導関数の座標変換で、不変になるようにするための仕掛けのような気がする。つまり、上式を書き直すと、

 \displaystyle F'(z) = G'(w) \frac{dw}{dz}

ということだから、形式的に両辺を dz倍してみると

 \displaystyle F'(z) dz = G'(w) dw

この等式が等しくなるような場合にのみ、微分形式というものを考えましょうということをテキストは言っているのだろうか。


微分(形式)の留数

ωをリーマン面 X 上 (1次)微分(形式)とする。微分形式を単に「微分」とも呼ぶ。
X 上の微分 ω の、点 a ∈ X における留数 Res(ω; a) は以下のように定義される:

 \omega の一つの表示  \(f,g\) を取る。 a \in Xのまわりの局所座標  \(U, \varphi\)  \varphi(a) = 0 となるものを取り、この座標 z = \varphi(x), x \in U に関する f, g の局所座標表示を  f(x) = F(z), g(x) = G(z) とする。F, G の z=0のまわりのローラン級数展開を
 \displaystyle F(z) = \sum_{n \ge \mu} a_n z^n
 \displaystyle G(z) = \sum_{n \ge \nu} b_n z^n
とする。
すると、
 \displaystyle F(z)G'(z) = \sum c_n z^n
という形に計算できるが、このとき、
 \displaystyle Res(\omega ; a) = c_{-1}
と定義する。


同様に微分形式の極・零点も、 F(z)G'(z)の極・零点のこととして定義されるらしい。