2007-01-01から1年間の記事一覧

セールの双対定理の証明(6)

の証明のつづき。がより少し大きいの元であることまではわかった。を示すために、 と仮定して矛盾が生じることを示す。とは、が成り立つことだったので、なら、となるがあり、 すなわち が成り立つ。そこで、このような Q の近傍を十分小さくとって、の中に…

セールの双対定理の証明(5)

昨日定義したとを使ってと定義する。このとき実は、 となっている。これが証明できるとが全射であり、コンパクトリーマン面に対するセールの双対定理の証明が完了したことになる。とはが成り立つことなので、まずはを計算してみるところから始まる。 とおく…

セールの双対定理の証明(4)

上記 が全射であることの証明のつづき。 をとったとき、 となるような が存在することを示すのが目標。 という因子を導入した。が単射であることはすでに証明されたので、とくに も単射。また上のを利用して、 という写像が定義できるが、これも単射。 への …

セールの双対定理の証明(3)

上記写像 が単射であることが示せたので半分証明が終わった。 あと残り半分。また長い。 が全射であること が任意に与えられたとする。はという線型写像である。 このときの元で、となるようなものを具体的に見出してやればよい。 を見つけてやるために、と…

セールの双対定理の証明(2)

前のつづき。具体的に を計算する作業を行う。を基に、大域的1形式をうまく作ってGreenの定理を使えるように持っていくのがコツらしい。 点の開近傍を因子のサポートと交わらないように十分小さくとる。をの局所座標でとなるようなものとする。 とおくと、 …

消滅定理の意味

: としよう。は上の大域的な関数とみなせるが、コホモロジーの次元があがるほど、生存のための条件が厳しくなり、ついには消滅するとイメージできるようになった。

セールの双対定理の証明(1)

この証明は長い。テキストではこの後7ページ以上がこの証明に費されている。ポイントとなる点をメモしておきたい。 と が以下の写像により同型であることを示せばよい。 が単射であること をとったとき、であれば であることを示せば は単射となる。 である…

セールの双対定理

: コンパクトリーマン面 : 上の因子 このとき 先日定義を確認した留数写像とカップ積の合成から、上の双一次形式 を作ることができる: これが非退化であることを示せばよい。

カップ積

もうしばらく準備がつづく。 上はカップ積と呼ばれる双一次写像の定義。 定義の意味を確認しておく。まず について。 と書けて、は上の有理型1形式で、 を満たすようなもの。を貼り合わせて が作られる。 であるから上では が成立している。次に について。 …

という同型は、0でない有理型1形式を一つとって によって成立。をで置き換えてよって

留数写像(2)

次の層の系列は完全列となることを昨日確認した。これから以下の長完全系列が誘導される。第5章の結果から なので、以下が完全系列となる。これから が全射となる。したがってに対し となる が存在する。このときとなるので、の選び方にはの分だけ自由度があ…

留数写像

まず記号の確認。 上の正則1形式の集合。 正則関数により局所的にの形に表される。 上の級(1,0)形式の集合。 級関数により局所的にの形に表される。 上の級2形式の集合。 級関数により局所的にの形に表される。 次の層の系列は完全列となる:(は包含写像、は…

双対性

§6.3「セールの双対定理とその証明」に入る。 今後、2つの線形空間の次元が一致していることを求められることがしばしばあるらしい。その判定方法の一つとして、以下の命題がある: は有限次元-線形空間とする。 の間に非退化双一次形式が存在すると、とは互…

完備一次系

コンパクトリーマン面上の因子と線形同値な因子で効果的(正)なもの全体の集合を と書き、これを因子の定める完備一次系と呼ぶ。 のとき、以下の対応は全単射となる: これを確かめてみる。まず左辺の元の形を確認(復習)する。 をの開被覆とする。の元を任意…

標準因子

リーマンロッホの定理から、コンパクトリーマン面上には0でない大域的有理型1形式が存在することがわかる。 任意の0でない上のもう一つの大域的有理型1形式をとると、ある0でない大域的有理型関数がありと表される。したがってこれは上の0でない大域的有理型…

因子

の近傍でと表されたとすると、だから。(極の場合も同様) 同様に考えて以下も成立。 因子の線形同値 コンパクトリーマン面上の因子が、ある上の大域的有理型関数にによって と表せるとき、とは線形同値であるといい と書く。演習問題があるのでやってみよう。…

コンパクトリーマン面と射影平面代数曲線

かなり間が開いてしまったので復習から。リーマン-ロッホの定理によって、コンパクトリーマン面上には定数でない大域的有理型関数が存在することが保証される。 上の有理型関数全体をとする。すると、とは 1:1に対応するそうだ。 そして は、上の有理型関数…

コンパクトリーマン面と射影平面代数曲線

コンパクトリーマン面上に定数でない大域的有理型関数が存在することを利用すると、が射影平面上の非特異代数曲線であることを示せるらしい。またその逆も言えるそうで、この後しばらくその証明が続くようだ。 コンパクトリーマン面上に存在が保証された定数…

ベクトル空間の完全系列の扱い方

勉強不足でわからないことあり。 リーマン-ロッホの定理の証明の中で、ベクトル空間の長完全系列が出てくる。いま の次元は有限であることは事前にわかっているのだが、上が完全であることから、も有限次元であることはどうしてわかるのか考えてみたい。 と…

定数でない大域的有理型関数の存在

リーマン-ロッホの定理から以下が成立する(リーマン-ロッホの不等式という):これを応用すると、コンパクトリーマン面上に定数でない大域的有理型関数が存在することが簡単に示せる。 をとる。とおくと因子ができる。このに対してリーマン-ロッホの不等式を…

リーマン-ロッホの定理(2)

リーマン-ロッホの定理 はともに有限で、次の等式を満たす: 上の証明メモ。 まずは の場合の証明。の値に関する数学的帰納法を用いる。

リーマン-ロッホの定理

続いて§6.2「リーマン-ロッホの定理とその最初の応用」に入る。を種数のコンパクトリーマン面とする。すなわち とする。 を上の因子とする。 すでに因子とは何であったか、忘れかけているが、が という形で、が0でないような達が離散であるようなものが因子…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(8)

の全射性の証明。一昨日の続き。任意にが与えられたとき、上大域的に定義された級(0,1)-微分形式で、大域的に が成立するものを構成するところまで来た。このを利用することにより を満たす を見出すことを次の目標とする。は上の正則関数で2乗可積分なもの…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(7)

最後に残った補題2の証明方法の概略まとめ。 補題2 次の条件を満たすが存在する: に対し、 (in ) とおく。このはヒルベルト空間の直和で定義されているからまたヒルベルト空間である。 次に とおくと、はの閉部分空間となっており、これもヒルベルト空間と…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(6)

シュワルツの補題の証明。 はコンパクトゆえ、有限個のの元を中心とする半径の開円板で覆うことができる(各開円板はに含まれるようにをとることができる)。その有限個のの点を とする。 このを利用して、とおく。 の元は、各点でのorderがN以上。すなわち、…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(5)

大きな残件整理。まず補題1。 補題1 に対して、 は次の(1)(2)の性質を持つ閉部分空間 を持つ: (1) に対して を満たす。 (2) テキストで「シュワルツの補題」と書かれている命題を利用して証明する。1変数関数論に出てくる同じ名前の補題は、内の開円板上の…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(4)

先日のつづき。 利用する補題を整理してしておく。 補題1 に対して、 は次の(1)(2)の性質を持つ閉部分空間 を持つ: (1) に対して を満たす。 (2) このとき と直交分解される。 補題2 次の条件を満たすが存在する: に対し、 (in ) 上の補題2により存在が保…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(3)

次のステップは昨日書いたような性質を持つ の有限次元部分空間 の存在証明。さて は の部分空間であったが、 を与えると、 は次の(1)(2)の性質を持つ閉部分空間 を持つ: (1) に対して を満たす。 (2) この命題も証明するのにとても長い準備が必要だが、ま…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(2)

のimageの次元を求めるのが次の目標。 であるから、の任意の元は、の元を代表元とする同値類で表される。 そこではどんなものなのかを調べてみる。 の開被覆から任意に2つのでを満たすものを取り出す。は各上の正則関数を一つずつ選んで並べたものに相当する…

コンパクトリーマン面の種数の有限性

表題の長い長い証明の最後までようやくたどりついた。 たどりついたのはいいが、あまりに長く曲がりくねった道だったので、途中どんな景色だったのか感じるゆとりのないまま終点に着いてしまった。要するに何をやっていたのか少し時間をかけて復習してみよう…