単位円板D(0;1)の自己同型群(4)
今度こそ上半平面Pの自己同型群を求める。
テキストは発見的にAut(P)を見つけたのではなく、天下りに
が与えられ、G = Aut(P)を確かめるという手順で進んでいるようだ。
G ⊂ Aut(P) は簡単に確かめられるが、逆を示すのがめんどう。これは G が P に推移的に作用していること、および、P のある1点の固定群が G に含まれれば G = Aut(P) であるという補題を用いて証明される。
GがPに推移的に作用していること:
∀z = x+iy ∈ P に対し、
とおくと、
となることから言える。
i ∈ P の固定群が G に含まれること:
これの証明にずいぶんと手間取ってしまった。
方針はCayley変換を介して Aut(P) と Aut(B) (単位円板の自己同型群)が同型であることと、Bの元 0 を固定するBの自己同型が であることを利用する。
を i を固定する P の自己同型とする。すると Cayley変換によって
となるから、に両辺を作用させることにより、
となる。これをwについて解いて、係数がすべて実数からなり ad - bc = 1 の形になれば i の固定群が G に含まれることが言える。これを示すのに1週間あまりかかってしまった。
より
これより
この変形に気がつくのがポイントだったようで、ここさえ気がつけばあとは機械的な計算により、
となることが示せる。
i を固定する P の自己同型はすべて上の形に表されるから G に含まれる。
よって、G = Aut(P) が証明された。
Aut(P)をよく知られた形で表す
で定義された群が上半平面 P の自己同型群であることがわかった。
ここで2次特殊線型群 の元 を G の元 に対応させる写像
を考えると、これはからGへの準同型で、その核はとなる。なぜならば、 を任意のzについて満たすa,b,c,d を求めることにより、a = d, b = c = 0 となるので。
以上から
であることがわかった。