複素平面Cの自己同型群

はじめに\mathbb{C}複素解析的自己同型群Aut(\mathbb{C})を求める。

求めようとして、まだ解析関数のことをよく理解していないことに気づいたので復習しながらトライしてみる。


\mathbb{C}の自己同型fは全平面\mathbb{C}で正則だから、とくに0において収束半径∞のテイラー級数に展開できる。
 \displaystyle f(z) = a_0 + a_1 z + a_2 z^2 + \cdots
この級数展開で係数 a_0,a_1,a_2,\cdotsの中で0でないものが無限個あったと仮定すると、無限遠点∞がfの真性特異点になるという。fの∞における特異点とは  g(z)=f(1/z)の0における特異点のことであったから、
 \displaystyle g(z) = f(1/z) = a_0 + a_1 \frac{1}{z} + a_2 \frac{1}{z^2} + \cdots
となってg(z)の0のまわりの級数展開の負ベキの項が無限個あることになるので、0がgの真性特異点となり、無限遠点∞がfの真性特異点となることがわかった。前にやったようにfの真性特異点の近傍ではfは任意の\mathbb{C}の値をとりうる。テキストでは証明なしで結果のみ紹介されていた Picardの大定理というのがあって、真性特異点の近傍においてfは高々1個の点を除きすべての値を無限回とるという*1。すなわち∀a∈Cに対して f(z)=a となる z が無限個あるのだから、f は単葉となりえない。
よって、係数 a_0,a_1,a_2,\cdotsの中で0でないものは有限個しかないことが結論され、f は多項式となる。

さて、f がn次の多項式であったとすると、代数学の基本定理により方程式
 \displaystyle f(z)=0
はn個の解を持つが、いまfは\mathbb{C}で単葉だから、上の解はただ一つの点でなければならない。すなわち、f は一次式
 \displaystyle f(z) = a_0 + a_1 z  (a_1\neq 0)
でなければならない。


逆にzの1次の多項式f(z) = a_0 + a_1 z\mathbb{C}で正則であることは明らかで、もしf(z)=f(z')なら a_1(z-z')=0より z=z'となるから単葉。


以上から、

 \displaystyle Aut(\mathbb{C}) = \{a_0+a_1 z| a_0,a_1\in\mathbb{C},a_1\neq 0\}

であることが示された。

*1:先日古本屋で250円で見つけた能代清「初等函数論演習」をみると、そんな大道具を持ち出さなくても証明できるようだ。