双対性

§6.3「セールの双対定理とその証明」に入る。 今後、2つの線形空間の次元が一致していることを求められることがしばしばあるらしい。その判定方法の一つとして、以下の命題がある: は有限次元-線形空間とする。 の間に非退化双一次形式が存在すると、とは互…

完備一次系

コンパクトリーマン面上の因子と線形同値な因子で効果的(正)なもの全体の集合を と書き、これを因子の定める完備一次系と呼ぶ。 のとき、以下の対応は全単射となる: これを確かめてみる。まず左辺の元の形を確認(復習)する。 をの開被覆とする。の元を任意…

標準因子

リーマンロッホの定理から、コンパクトリーマン面上には0でない大域的有理型1形式が存在することがわかる。 任意の0でない上のもう一つの大域的有理型1形式をとると、ある0でない大域的有理型関数がありと表される。したがってこれは上の0でない大域的有理型…

因子

の近傍でと表されたとすると、だから。(極の場合も同様) 同様に考えて以下も成立。 因子の線形同値 コンパクトリーマン面上の因子が、ある上の大域的有理型関数にによって と表せるとき、とは線形同値であるといい と書く。演習問題があるのでやってみよう。…

コンパクトリーマン面と射影平面代数曲線

かなり間が開いてしまったので復習から。リーマン-ロッホの定理によって、コンパクトリーマン面上には定数でない大域的有理型関数が存在することが保証される。 上の有理型関数全体をとする。すると、とは 1:1に対応するそうだ。 そして は、上の有理型関数…

コンパクトリーマン面と射影平面代数曲線

コンパクトリーマン面上に定数でない大域的有理型関数が存在することを利用すると、が射影平面上の非特異代数曲線であることを示せるらしい。またその逆も言えるそうで、この後しばらくその証明が続くようだ。 コンパクトリーマン面上に存在が保証された定数…

ベクトル空間の完全系列の扱い方

勉強不足でわからないことあり。 リーマン-ロッホの定理の証明の中で、ベクトル空間の長完全系列が出てくる。いま の次元は有限であることは事前にわかっているのだが、上が完全であることから、も有限次元であることはどうしてわかるのか考えてみたい。 と…

定数でない大域的有理型関数の存在

リーマン-ロッホの定理から以下が成立する(リーマン-ロッホの不等式という):これを応用すると、コンパクトリーマン面上に定数でない大域的有理型関数が存在することが簡単に示せる。 をとる。とおくと因子ができる。このに対してリーマン-ロッホの不等式を…

リーマン-ロッホの定理(2)

リーマン-ロッホの定理 はともに有限で、次の等式を満たす: 上の証明メモ。 まずは の場合の証明。の値に関する数学的帰納法を用いる。

リーマン-ロッホの定理

続いて§6.2「リーマン-ロッホの定理とその最初の応用」に入る。を種数のコンパクトリーマン面とする。すなわち とする。 を上の因子とする。 すでに因子とは何であったか、忘れかけているが、が という形で、が0でないような達が離散であるようなものが因子…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(8)

の全射性の証明。一昨日の続き。任意にが与えられたとき、上大域的に定義された級(0,1)-微分形式で、大域的に が成立するものを構成するところまで来た。このを利用することにより を満たす を見出すことを次の目標とする。は上の正則関数で2乗可積分なもの…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(7)

最後に残った補題2の証明方法の概略まとめ。 補題2 次の条件を満たすが存在する: に対し、 (in ) とおく。このはヒルベルト空間の直和で定義されているからまたヒルベルト空間である。 次に とおくと、はの閉部分空間となっており、これもヒルベルト空間と…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(6)

シュワルツの補題の証明。 はコンパクトゆえ、有限個のの元を中心とする半径の開円板で覆うことができる(各開円板はに含まれるようにをとることができる)。その有限個のの点を とする。 このを利用して、とおく。 の元は、各点でのorderがN以上。すなわち、…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(5)

大きな残件整理。まず補題1。 補題1 に対して、 は次の(1)(2)の性質を持つ閉部分空間 を持つ: (1) に対して を満たす。 (2) テキストで「シュワルツの補題」と書かれている命題を利用して証明する。1変数関数論に出てくる同じ名前の補題は、内の開円板上の…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(4)

先日のつづき。 利用する補題を整理してしておく。 補題1 に対して、 は次の(1)(2)の性質を持つ閉部分空間 を持つ: (1) に対して を満たす。 (2) このとき と直交分解される。 補題2 次の条件を満たすが存在する: に対し、 (in ) 上の補題2により存在が保…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(3)

次のステップは昨日書いたような性質を持つ の有限次元部分空間 の存在証明。さて は の部分空間であったが、 を与えると、 は次の(1)(2)の性質を持つ閉部分空間 を持つ: (1) に対して を満たす。 (2) この命題も証明するのにとても長い準備が必要だが、ま…

コンパクトリーマン面の種数の有限性(2)

のimageの次元を求めるのが次の目標。 であるから、の任意の元は、の元を代表元とする同値類で表される。 そこではどんなものなのかを調べてみる。 の開被覆から任意に2つのでを満たすものを取り出す。は各上の正則関数を一つずつ選んで並べたものに相当する…

コンパクトリーマン面の種数の有限性

表題の長い長い証明の最後までようやくたどりついた。 たどりついたのはいいが、あまりに長く曲がりくねった道だったので、途中どんな景色だったのか感じるゆとりのないまま終点に着いてしまった。要するに何をやっていたのか少し時間をかけて復習してみよう…

リーマン球面の種数

第6章「コンパクトリーマン面の種数とリーマン-ロッホの定理」に入る。コンパクトリーマン面に対して、の次元をの種数といい、 あるいは などと表す。 の次元は無限次元でないことがこの後示され、それゆえコンパクトリーマン面の種数は正または0 の整数とな…

5章読了

一応読了。層係数コホモロジーの一般論については、道具として使えるようになることがまずは大事らしいので、その観点からして無視してもよさそうなところは飛ばしてみた。 そういうことよりも、Doulbaultの補題の証明とか泥臭いところの方が萌える。

因子、層の短完全系列

インフルエンザでダウンしてからしばらくお休みしていたがやっと復活。この間、p121§5.5まで読了した。位相空間上の層と準同型の系列 (列1) があったとき、任意のに関してが完全列となるとき、上の(列1)を層の完全系列という。の形の系列を、層の短完全系列…

因子に付随する層

少しずつ具体的な話になってくる。 リーマン面上の因子が一つ与えられたとする。このとき、以下のような層が定まる:は上の有理型関数の層の切断の部分空間である。は因子を と表したとき、 で定義される。因子に対する不等号の意味であるが、上のDについて…

因子(2)

リーマン面の各点に対して整数が与えられているとする。これを使って以下のような形式的な和を作る。 とおく。 このがの離散部分集合であるとき、をの因子という。 をリーマン面上の有理型関数とするとき、各に対しに関するその位数が定まった。これはが零点…

層化

前層の層化でつまづく。むずかしい。 前層であって層の条件 S1(一致の原理)とS2(貼り合わせの原理)の両方を必ずしも満たさないようながあったとき、各点におけるストークからその元(芽)をかき集めてくることにより層を作ることができる。この層をと書くそう…

因子

§5.1「層」読了。この節は一般論が中心であった。 §5.2「因子に付随する層」から、リーマン面を調べるために使う具体的な層が出てきそう。最初にある性質を満たす有理型関数の層として「因子に付随する層」なるものが登場する。

摩天楼層(2)

摩天楼層のもう一つの例。 をリーマン面とし を上の異なる点とし、それぞれの点に正整数が付随しているとする。 は上のある関数の零点や極を想定しているらしい。各の近傍の局所座標をとして、上の開集合に対し、を対応させるような を考える。 制限写像につ…

正則関数の層と収束ベキ級数環

リーマン面上の正則関数のなす代数の層をとすると、任意のについて、が成立。正則関数と解析関数は同じだから。

命題いくつか

演習問題の形で下のようにいくつかの命題が挙げられている。これらを解くとだんだん層が感覚的につかめるようになってきた感じがする。 層の同型とストークの同型 位相空間上の層 と層の準同型 に対して、 が同型写像 ⇔ が同型写像 層となるための条件の一つ…

摩天楼層

をリーマン面とし とする。の開集合 に対してとし、に対してで制限写像を定義すると、 は層になる。この層を という記号で表す。定義にしたがって のストークを求めるととなる。このとき層のサポートを で定義すると、 となる。このようにサポートが有限であ…

位相空間上の前層がさらに次の2つを満たすとき、は層であると定義される。 をの開集合、 をの開被覆とする。このような任意の に対し以下の(S1)(S2)を満たすようなを上の層と呼ぶ。 (S1) を満たす は 0のみ。 (S2) 各からを取り出した族 がに対して を満たし…