コンパクトリーマン面と射影平面代数曲線

かなり間が開いてしまったので復習から。

リーマン-ロッホの定理によって、コンパクトリーマン面X上には定数でない大域的有理型関数が存在することが保証される。
X上の有理型関数全体を \mathcal{M}(X)とする。すると、 X \mathcal{M}(X)は 1:1に対応するそうだ。
そして  \mathcal{M}(X) は、X上の有理型関数の一つ f をとると、

 \displaystyle \mathcal{M}(X) \simeq \mathbb{C}(f)[T]/(\varphi(T))

となる。
ただし、上の同型は \mathbb{C}代数としての同型。
 \varphi(T)は Tに関する次数が d := \mathrm{deg}fの、 \mathbb{C}(f)係数の既約多項式
 \varphi(T)=0の根となるX上の有理型関数hがあって、
 \displaystyle \mathcal{M}(X) \simeq \mathbb{C}(f,h)
となる。

以下具体例

例1 射影平面代数曲線の場合

 F(X_0,X_1,X_2)d次の複素数係数同次多項式で非特異なものとする。すると
 C := \{ [X_0:X_1:X_2] \in \mathbb{P}^2 | F(X_0,X_1,X_2)=0}
で定義される\mathbb{P}^2内の曲線は連結であることを示すことができて、Cはコンパクトリーマン面であることがわかる。
 \displaystyle x: C \ni [X_0:X_1:X_2] \mapsto \frac{X_1}{X_0} \in \mathbb{P}^1
C上の有理型関数となる。

すると上の方に書いたことから、
 \displaystyle \mathcal{M}(C) \simeq \mathbb{C}(x)[T]/(\varphi(T)) \simeq \mathbb{C}(x,h)

となる有理型関数 h \in \mathcal{M}(C)h\mathbb{C}(x)上の最小多項式であるところの\varphi(T)が存在するはず。

 \displaystyle y: C \ni [X_0:X_1:X_2] \mapsto \frac{X_2}{X_0} \in \mathbb{P}^1
がその hであり、
 \displaystyle \varphi(T) = F(1,x,T)
である。
よって
 \displaystyle \mathcal{M}(C) \simeq \mathbb{C}(x,y)

例2 超楕円曲線の場合

E\mathbb{C}^2内の以下で定義される曲線とする:
 \displaystyle y^2 = (x-a_1)(x-a_2)\cdots(x-a_{2g+1})
ただしx,y\mathbb{C}^2の局所座標、各a_1,\cdots,a_{2g+1}はすべて相異なる複素数
このときEはコンパクトリーマン面となり(第4章で確認済)、超楕円曲線と呼ばれる。

 \displaystyle x: E \ni (a,b) \mapsto a \in \mathbb{P}^1
E上の有理型関数となる。
そして
 \displaystyle \varphi(T):= T^2 - (x-a_1)(x-a_2)\cdots(x-a_{2g+1})
とおくと \varphi(T) \mathbb{C}(x)[T]上既約で、
 \displaystyle y: E \ni (a,b) \mapsto b \in \mathbb{P}^1 \varphi(T)=0の根となる。
よって
 \displaystyle \mathcal{M}(E) \simeq \mathbb{C}(x,y)

例3 複素トーラスの場合

 Eを1次元複素トーラスとする。E上の有理型関数の一つとしてペー関数 \wp:E \rightarrow \mathbb{P}^1が取れる。
 \displaystyle \varphi(T):= T^2 - (4\wp(z)^3-g_2 \wp(z) - g_3)
とおく。
すると \wp'E上の有理型関数であって、 \varphi(\wp')=0を満たし、 \varphi(T) \mathbb{C}(\wp)[T]上既約。
よって
 \displaystyle \mathcal{M}(E) \simeq \mathbb{C}(\wp,\wp')