リーマン球面の種数
第6章「コンパクトリーマン面の種数とリーマン-ロッホの定理」に入る。
コンパクトリーマン面に対して、の次元をの種数といい、
あるいは などと表す。
の次元は無限次元でないことがこの後示され、それゆえコンパクトリーマン面の種数は正または0 の整数となる。
最初にコンパクトリーマン面の一つ、リーマン球面の種数が 0であること:
が、の係数1次元チェックコホモロジー群の定義に基づき詳しく説明されている。
前章の復習と飛ばしたところで必要なところの学習を兼ねて、ポイントをメモっておく。
ポイントは1〜2章で詳しく見たように、リーマン球面 が2つの複素平面の貼り合わせとして、
ただし、
と表せることを利用する。
は リーマン球面 の開被覆となっており、はそれぞれ に同相である。
前章のおしまいの方で
という消滅定理を、Dolbaultの補題を仮定して証明しているので、これは既知として利用させていただく。
すると、 より、
となる。ここで
というのは、 を に制限して得られる層で、開集合に対して
等で定義されていた。いま だから 上の は複素平面上の任意の開集合ということになり、上の層と見なせるから、
である。も同様。
これによって、リーマン球面 の開被覆 は前章p130で定義されたルレイ被覆となるので、補題5.42が使えて
となる。従って被覆についてのチェックコホモロジーを計算すればよいことになった。
チェックコホモロジーの計算
を求めたい。
であったので、は、
という形で、fの各要素はそれぞれ
であって、これらはの元だから各に対して(いまはのみからなる)
を満たす。という写像は以下のように定義されていた(5章):
上式でとすると
となる。これが0だから なので、。
また、上式でiとjを入れ替えて足すと、がわかる。したがって なので、まとめると の元は、
と表されることがわかる。上より は で決まることがわかる。いま
でリーマン球面の定義から、
である。したがって、は複素平面から原点1点を除いた領域で正則な関数である。そこでは原点のまわりでローラン展開できて、
と書ける。上では座標を使うことができて、上式は、
となる。ここで
とおくとはそれぞれ上の正則関数だから
となった。そして
[tex: \displaystyle f_{01} = f_1 - f_0 = \partial^0*1]
である。は任意のの元だったがそれがの元ということだから
すなわち、
であることがわかった。
*1:f_0,f_1