標準因子

リーマンロッホの定理から、コンパクトリーマン面X上には0でない大域的有理型1形式 \omegaが存在することがわかる。
任意の0でないX上のもう一つの大域的有理型1形式 \etaをとると、ある0でない大域的有理型関数fがあり \omega = f \etaと表される。したがって

 \displaystyle \mathrm{div}(\omega) = \mathrm{div}(f \eta) = \mathrm{div}(f) + \mathrm{div}(\eta)

これはX上の0でない大域的有理型1形式の定める因子はすべて線形同値であることを意味する。その線形同値類を Xの標準因子といい、 K_Xという記号で表す。


この標準因子がとっても役に立つらしい。コンパクトリーマン面X上の必ず存在する0でない有理型1形式 \omegaを利用することで、 K_X = [\mathrm{div}(\omega)]と表せる。これを利用すると、以下の \mathcal{O}_X-加群の層としての同型が成り立つ:

(1) \displaystyle \mathcal{O}_X(K_X) \simeq \Omega_X^1

(2) \displaystyle \mathcal{O}_X(K_X + D) \simeq \Omega_X^1(D)