セールの双対定理の証明(3)

 \displaystyle \imath_D : H^0(X,\Omega_{X}^{1}(-D)) \ni \alpha \mapsto  \(\beta \mapsto \langle\alpha,\beta\rangle = \mathrm{res}(\alpha\beta) \) \in H^1(X, \mathcal{O}_{X}(D))^{*}

上記写像  \imath_D単射であることが示せたので半分証明が終わった。
あと残り半分。また長い。

 \imath_D全射であること

 \gamma \in H^1(X, \mathcal{O}_{X}(D))^{*}が任意に与えられたとする。 \gamma

 \displaystyle \gamma: H^1(X, \mathcal{O}_{X}(D)) \rightarrow \mathbb{C}

という線型写像である。
このとき H^0(X,\Omega_{X}^{1}(-D))の元\alphaで、

 \langle\alpha,\beta\rangle = \mathrm{res}(\alpha\beta) = \gamma(\beta)  \(\text{for} \forall \beta \in H^1(X,\mathcal{O}_{X}(D))\)

となるようなものを具体的に見出してやればよい。


 \alpha \in H^0(X,\Omega_{X}^{1}(-D))を見つけてやるために、 H^0(X,\Omega_{X}^{1}(-D))という関数空間を次のようにして少し広げる。すなわち、

 \displaystyle D_n:= D - nP (nは正整数)

という因子を考える。 -D_n = -D + nPとなるので、

 \displaystyle H^0(X,\Omega_{X}^{1}(-D)) \subset H^0(X,\Omega_{X}^{1}(-D_n))

となる。 H^0(X,\Omega_{X}^{1}(-D_n))は、 H^0(X,\Omega_{X}^{1}(-D))の元であることに加えて、点Pにおいて高々n までの極を取ってもよいと条件をゆるめた空間となる。 H^0(X,\Omega_{X}^{1}(-D_n))の元 \alpha_nはPをn位までの極としてもよいので、そのままでは H^0(X,\Omega_{X}^{1}(-D))の元にはならない。しかし同じくPのみをn位までの極として持ち、他の点では正則な関数 \varphi_nによって \alpha := \frac{\alpha_n}{\varphi_n}を作ってみると、Pで正則となる。
こういう方針で\alphaを見出す手続きが進められるようだ。細かいところでいろいろ注意しなければならないことがあるようなだ。