はじめての層係数コホモロジー(3)
昨日の続きで、
複素多様体M上の級複素直線束の全体はAbel群をなし、それは群として と同型。
上の命題の証明が目標。
- 整数の定数層
- M上の正則関数(の芽)の層
- M上の決して0をとらない正則関数(の芽)の層
の 3つの層を使って、
を示すのが第一段階。これが示せれば複素直線束全体と が同型であることを示せばよく、これは比較的簡単に示すことができる。そこで上を示すために、まず以下の命題を証明しようとしているところ。
は、Abel群の層の短完全系列である。
昨日に続き、
の部分を見ていく。
写像は次のように定義される。すなわちの一点の近傍において、その座標をで表したとき、
と定義するそうだ。M は必ずしも1次元でなくてもよいようだが、、2次元以上の場合、多変数複素関数の指数関数はどのように定義されるのだろう?とりあえず1次元の場合で考えておこう。
ところで、 と書いたが、これは点における層の茎(stalk)と呼ばれているもの。のある開近傍が存在し、となれば(同値)とみなし、
で定義される(は点pの開近傍族)。 の元は点pの近傍における正則関数の芽と呼ばれる。
さて、
が単射であることは明らか。
が全射であることは、点pの十分小さな近傍において 0を取らない正則関数は一価な対数関数の分枝を持ち、これが e により自分自身に写されることからわかる。
あとは
であるが、これは
よりわかる*1。したがって、
がAbel群の層の短完全系列であることが証明できた。
トポロジーのときと同じように、上の短完全系列からコホモロジー群の長完全系列が成り立つ。
よって、もし
であれば、
が完全系列となり、
が成り立つ。
つづく
*1:は乗法群であることに注意