はじめての層係数コホモロジー(2)
下の命題の証明の続き。
複素多様体M上の級複素直線束の全体はAbel群をなし、それは群として と同型。
昨日書いたとおり、
- 整数の定数層
- M上の正則関数(の芽)の層
- M上の決して0をとらない正則関数(の芽)の層
の 3つの層を使う。
まず以下の命題を証明する。
は、Abel群の層の短完全系列である。
まずはこの列の意味するところを一つずつ確認していく。
層の準同型
上の系列に出てくる
や
は2つの層の間の準同型。これの定義を確認する。
そのため、まず定数層 の定義を確認しておく。M を位相空間とみなして、開集合
をとる。
とする。これらに対して
というAbel群が決まらないといけない。
と定義する。すなわち任意の開集合Uに対して整数の加法群を対応させる。また制限写像 を、
で定義する。このとき および は明らかなのでは前層。層となっていることも明らか。
つぎに は開集合 U に対して U 上の正則関数の芽を対応させるもの。
は、開集合Uを一つ決めたとき、およびはともにAbel群とみなせる。一つの整数に対して上の整数値定数関数は上の正則関数であるから、
という写像を定義できる。これはAbel群間の写像とみて準同型になっている。
このように一つの開集合 U をあたえると、それに対応して一つの準同型が決まる。U に対応して決まる準同型をと書いたとき、
という準同型写像の族が決まる。これが制限関数と可換なとき、層の準同型という。