正則ベクトル束の標準接続(3)

やっと正則直線束の定義が理解できたので次に進む。

正則直線束の例(複素射影空間の超平面束)

p40「例2.2.17」について。
1次元複素射影空間
 \displaystyle \mathbb{P}^{1}\(\mathbb{C}\) = \{\(z^{0}:z^{1}\) \| \(z^{0},z^{1}\) \neq \(0,0\) \}
の余次元1の複素部分多様体
 \displaystyle H = \{\(0:z^{1}\) \in \mathbb{P}^{1}\(\mathbb{C}\) \| z^{1} \neq 0\}
によって先日のやり方で定まる正則直線束  L_H \mathbb{P}^{1}\(\mathbb{C}\)の超平面束という。

 \displaystyle \mathcal{O}(k) := L_H \otimes \cdots \otimes L_H

と定義する。ただし右辺は  L_Hの k 個のテンソル積。これは  H + \cdots + H = kH の直線束となっている。


この 1次元の場合、H は  \(0:1\) の一点からなる。
 \mathbb{P}^{1}\(\mathbb{C}\)開被覆として  U_0, U_1 を次のようにとれる。

 \displaystyle U_0 := \{ \(z^{0}:z^{1}\) \in \mathbb{P}^{1}\(\mathbb{C}\) \| z^{0} \neq 0\}
 \displaystyle U_1 := \{ \(z^{0}:z^{1}\) \in \mathbb{P}^{1}\(\mathbb{C}\) \| z^{1} \neq 0\}

 U_0 においては z^{0} \neq 0 であることから  \(z^{0}:z^{1}\) = \(1: z^{1}/z^{0}\) と書ける。 s = z^{1}/z^{0} とすれば  s \in \mathbb{C}^1 であり s は  U_0 の局所座標となる。
同様に  U_1 において  t = z^{0}/z^{1} として、t を  U_1 の局所座標として取れる。

さて、 H の定める直線束  L_H は次のようになる。まず  U_0 \cap H = \phi なので  U_0上の 0 にならない関数として  f_0 = 1 を取る。また  U_1 \cap H = Hなので、 U_1上では正則関数  f_1 = t が取れる。すると  f_0, f_1 を用いて、 U_0 \cap U_1 上で正則な関数
 \displaystyle f_{01} = \frac{f_0}{f_1} = \frac{1}{t}
 \displaystyle f_{10} = \frac{f_1}{f_0} = t
が取れる。この  f_{01}, f_{10} L_H の変換関数系となっている。