ベクトル束の接続(2)

具体的なベクトル束の線形接続の例。

まず 1番簡単な例として、ランク1の自明なベクトル束の場合。

自明なベクトル束とは、 E = M \times \mathbb{R}^r のように、底空間 M と  \mathbb{R}^r の直積で表されるようなベクトル束で、r を そのランクという。だから、ランク1の自明なベクトル束とは、
 \displaystyle E = M \times \mathbb{R}
のような E のこと。


ベクトル束の線形接続の定義に照らし合わせてみると、この  E = M \times \mathbb{R} の線形接続  \nabla は、 C^{\infty}\(M, M \times \mathbb{R}\) から  C^{\infty}\(M, \(M \times \mathbb{R}\)  \otimes T^{*}M\) への線形写像である。
 s \in C^{\infty}\(M, M \times \mathbb{R}\) とすれば  s M から  M \times \mathbb{R} への写像であるが、 s は切断ゆえ  \pi \circ s = id_{M}。だから  s M 上の関数と見なされる。
そして M 上の関数 s に対して  \nabla s C^{\infty}\(M, \(M \times \mathbb{R}\) \) \otimes T^{*}M の元、すなわち  M \times \mathbb{R} に値を取る 1次微分形式となる。M の元 p を一つ固定して考えるわけだから  \mathbb{R} に値を取る 1次微分形式(普通の微分形式)と考えてよい。
そこで天下りっぽいが、 ds が M上の 1次微分形式であることから、
 \displaystyle \nabla s := ds
とおく。すると、M 上の関数 f,s に対して
 \nabla\(fs\) = d(fs) = f ds + s \cdot df = f \nabla s + s \cdot df
が成立ち、 E = M \times \mathbb{R} 上の線形接続が定義できた。


次に ランクr の自明なベクトル束の場合。
すなわち  E = M \times \mathbb{R}^r の場合。このときは上と同じように考えて、E の切断 s は、M 上の  \mathbb{R}^rに値をとる C^{\infty}関数  s: M \to \mathbb{R}^rと考えることができる。そこで \mathbb{R}^rの自然な基底 e_1,\cdots, e_r を取ると、 p \in Mに対し、
 \displaystyle s(p) = \sum^{r}_{j=1} {\xi(p)^j e_j}
のように座標表示される。よって s = \sum {\xi^j e_j}と書ける。Eの切断sの、この局所座標表示を利用して、
 \displaystyle \nabla s = \sum {d \xi^j \otimes e_j}
と定義すると、これが線形接続になっているそうだ。
階数1の場合と違い、もし  \nabla s = ds で定義しようとすると、
 \displaystyle ds = d(\xi^j e_j) = d\xi^j \otimes e_j + \xi_j d e_j
と第2項に余分なものがつく。 d e_jという形は曲面の古典論で出てきた形に似ている。2次元曲面だとこれが法成分になるのだろう。