ベクトル束の接続

第2章に入る。
接続とは、 \mathbb{R}^3 内の 2次元曲面における共変微分を、一般化、抽象化したもののようだ。
2次元曲面上の接ベクトル場 X の共変微分は、微分 dX を接平面の方向の成分と法ベクトル方向に分解したときの 接成分であった。
一般の多様体においては「法ベクトル方向」というものは存在しないので、2次元曲面の性質のうち、法ベクトルに依存しない性質をベースにして、共変微分、曲率などを一般の多様体において定義するらしい。
2次元曲面における場合と似たような計算がたくさん出て来る。


最初はベクトル束の線形接続というものが出て来るが、この定義を理解するために、ベクトル空間のテンソル積の復習をする。

 \displaystyle V \otimes U^{*} \simeq Hom\(U,V\)

これは、左辺の元  v \otimes f \in V \otimes U^{*} をとると、 f f : U \to \mathbb{R} という写像であるので、 v \otimes f に対して  u \in U v \otimes f(u) のように代入してやることにより  f(u) \in \mathbb{R} から v \otimes f(u) \in V と考えることができる。
( V \mathbb{R} \otimes V は、 \alpha v \leftrightarrow \alpha \otimes v により同型と見なせる) したがって  \displaystyle V \otimes U^{*} の元は  U \to V写像と見なせる。


これを利用すると、

 \displaystyle E \otimes T^{*} M \simeq Hom\(TM,E\)

とみなせる。つまり  E \otimes T^{*}M の元は、接ベクトルに  E の値を対応させる写像とみなせる。接ベクトルに  \mathbb{R} の値を対応させる線形写像多様体 M 上の1次微分形式だったことから、 E \otimes T^{*}M の元のことを「 E に値をとる微分形式」と呼ぶらしい。
実ベクトル空間  V の複素化を  V \otimes \mathbb{C} と書くことができるのと似たようなものと思えばいいだろうか。

これを利用して、ベクトル束  \pi: E \to M の線形接続  \nabla というものを以下のように定義する。

 \nabla Eの切断  C^{\infty}\(M, E\) から  E \otimes T^{*} M の切断  C^{\infty}\(M,E \otimes T^{*} M\) への線形写像

 \displaystyle \nabla : C^{\infty}\(M, E\) \to C^{\infty}\(M,E \otimes T^{*} M\)

で、 \forall f \in C^{\infty}\(M\), \forall s \in C^{\infty}\(M, E\) に対し、以下を満たすもののこと。

 \displaystyle \nabla\(f s\) = f \nabla s + s \otimes df


この後、ベクトル束が与えられたとき、

  • その上の線形接続は存在するか?
  • 存在するなら一意に決まるか?
  • 一意に決まらないなら自然なもの、役に立つものにはどんなものがあるか?

ということを、いろいろなベクトル束の場合に調べていく。