C(D)に距離を入れる(2)

複素平面上の開集合に対して
 \displaystyle (1) K_n \subset K^{\circ}_{n+1}  (n=1,2,\cdots)
 \displaystyle (2) D = \bigcup_{n\le 1}K_n
を満たすコンパクト集合の列 (K_n)_{n\ge 1}が存在する。
具体的には、
 \displaystyle K_n = \{z\in\mathbb{C}\| |z|\le n, d(z,\mathbb{C}-D)\ge \frac{1}{n} \}
とおく。こうするとnが大きくなるにつれ、原点中心半径nの円の中にDが徐々にとりこまれ、内側はDの境界から1/nほどの距離のかたまりがK_nとなって、(2)が成立することがわかる。(1)は明らかに成立。
Dが(2)のようにコンパクト集合の和として表されることを利用し、 \cal{C}(K_n)上の距離を利用する。

 \displaystyle d_n(f,g) = sup_{z\in K_n}|f(z)-g(z)|
とする。そしてなんだか変な式で \cal{C}(D)上の距離dを以下のように定義する。

 \displaystyle d(f,g) = \sum^{\infty}_{n=1} \frac{1}{2^n} \frac{d_n(f,g)}{1+d_n(f,g)}

これはなんだろうと思ったが、どうやら \frac{d_n(f,g)}{1+d_n(f,g)}の部分は距離が必ず1以下になるようにしているような感じ。位相空間上に距離dが定義されているとき、 d(x,y) d'(x,y)=\frac{d(x,y)}{1+d(x,y)}は同じ位相を定める、すなわちdで測って近い点はd'で測っても近く、逆もその通り。すると \frac{d_n(f,g)}{1+d_n(f,g)}は常に1未満になって使い勝手がよいようだ。
これら\frac{d_n(f,g)}{1+d_n(f,g)}をそのまま足し合わせずに、 1/2^nを係数として掛けているのはそうしないと収束しないからか。
 \displaystyle \sum^{\infty}_{n=1} \frac{1}{2^n}\frac{d_n(f,g)}{1+d_n(f,g)}\le \sum^{\infty}_{n=1} \frac{1}{2^n} = 1
となり、d(f,g)は収束する。

このように定義した d は距離の公理を満たし、確かに \cal{C}(D)の距離となっていることが確かめられる。
また K_n \subset K_{n+1}より
 \displaystyle d_n(f,g) \le d_{n+1}(f,g)
が成り立つ。 K_{n+1}の方が大きいので|f(z)-g(z)|がより大きい値を取る可能性があるため。

また
 \displaystyle d(f,g) \le d_n(f,g) + 2^{-n}
が成り立つ。