リーマン多様体

多様体M上のk次形式まで進んだが、微分形式に進む前に、テキストではリーマン多様体というものが考察される。
M上のk次形式\omegaで、任意の置換σにたいして  \omega(X_{\sigma(1)},\cdots,X_{\sigma(k)}) = \omega(X_1,\cdots, X_k)を満たすものを k次対称形式という。
とくにk=2のときについて。多様体M上の2次の共変対称テンソル場ωで正定値のものを、M上のリーマン計量というそうだ。
多様体M の各元 p に対する2次の対称共変テンソル場とは、p に対して以下を満たす \omega_p:T_p(M) \times T_p(M) \to \mathbb{R}を対応させるもの:
 \omega_p(X,Y)=\omega_p(Y,X) for \forall X,Y \in T_p(M)
そして、M上の2次の共変テンソル\omegaが正定値、すなわち任意の0でない X \in T_p(M)に対して  \omega_p(X,X) \gt 0となるようなものをリーマン計量と呼ぶそうである。
リーマン計量 g を持つ多様体 (M,g)をリーマン多様体と呼ぶ。多様体Mがσコンパクトであれば少なくとも一つリーマン計量を持つ。テキストではこのことが、Whitneyの定理(σコンパクトな多様体は十分次元の高い\mathbb{R}^nへの埋め込みを持つ)を既知として証明される。この証明は案外簡単。\mathbb{R}^nには通常の意味での内積によりリーマン計量 g_0が入る。このg_0をWhitneyの定義により存在が保証される埋め込み \varphi: M \to \mathbb{R}^nによって引き戻してやればよい:
 g = \varphi^{*} g_0
whitneyの定理を使わなくても、1の分割を使えば証明できる。σコンパクトな多様体の座標近傍を用いて作った開被覆はそれに従属する1の分割を持つ。各座標近傍は自然なリーマン計量g_0を持つので、これと1の分割f_{a}を掛けて足し合わせてやればよいらしい。

多様体M にリーマン計量gが入ると何がうれしいかといえば、pにおける任意の接ベクトルXに
 \parallel X \parallel = \sqrt{g(X,X)}
で長さを定義できること。そうするとXの積分曲線の長さを積分によって定義することができる。これにより多様体M上の曲線の長さが定義できる。