前層の間の準同型
が線形空間だとし、制限写像を線形写像と考えていたが、各が線形空間以外の代数構造を持つ場合を考えることもある。その代数構造が代数ならを代数の前層といい、制限写像を代数の準同型写像であるものと考える。今読んでいるテキストでは 線形空間の前層を単に前層と呼ぶが、線形空間の間の線形写像を準同型写像とも呼ぶことにすると約束する。
を上の前層とする。各に対して
という準同型写像が定まって、任意のであるに対して以下の図式が可換になるとする:
このとき、準同型写像の集まりのことを前層からへの準同型といって、
と表す。
いくつか記号の約束をする。
前層が与えられたとき、はでのストークの元を定めるが、これをしばしばと表す。
また前層間の準同型が与えられたとき、のによる像を、しばしばと略記する。
慣れるために演習問題を解く。
問題5.1(p103)
を前層の準同型とする。
に対して以下の(1)(2)は同値であることを示せ。(1)
(2)
上の書いた記号の約束に基づき、まず(1)の式の意味の解釈を試みる。
仮定より であるから、まず左辺は
となり右辺は、
いう意味になる。従って(1) は
という前層のでのストークにおける等式であることがわかる。これは
を意味するので、同値の定義から であるが存在して、
・・・(式a)
となる。これが (1)の意味である。
さて、 は前層間の準同型であるから定義により制限写像とが可換で、
である。従って(式a)の左辺は省略記法を用いて、
となり、右辺は
となる。よって (1)はあるに対して
ということだから (2)と同値。(証明終)