アフィン曲線(2)

§4.3「アフィン平面代数曲線」読了。
この§の主題は、既約多項式 f(x,y)で定義されたアフィン曲線が特異点を持たなければ、局所的にある2次元複素開円板の閉部分多様体となり、従ってリーマン面とみなせるというところにあるのだろうか。
この§では難しいところがいっぱいあったので、以下気になったところをメモしておく。

d次既約アフィン曲線上の点は、x座標の変化に伴いd価的に変化すること

 f(x,y) \in \mathbb{C}[x,y]が d次の既約多項式であるとする。このとき適当に座標変換を行うことによって

 \displaystyle f(x,y) = y^d + a_1(x)y^{d-1} + \cdots + a_d(x), a_i(x) \in \mathbb{C}[x]

という形に  f(x,y)を表すことができる(p85, Lemma 4.22)。
 f(x,y) = 0 が定める  \mathbb{C}^2上のアフィン曲線を  C で表す。
このとき任意の複素数  a \in \mathbb{C}に対してx座標が  aであるような Cの点は必ず存在して、高々d個である。これは代数学の基本定理から容易にわかるが、有限個の点を除くと、x座標が aであるような点はぴったりd個だそうである。
この証明をメモしておく。
可換環と体については知識不足ゆえ、見よう見まねでまとめてあるので、以下怪しいところが多数あるであろう。


 \displaystyle f(a,y) = y^d + a_1(a)y^{d-1} + \cdots + a_d(a) = 0
yの代数方程式とみると、その解は重解を含めて数えて d個ある。解が d-1個以下になるのは重解を持つとき。そこで上の方程式が重解を持つような y は高々有限個しかないことを示せばよい。
なんだか雰囲気として、有理型関数の分岐点が有限個しかないという、複素解析的な問題を代数的に見るとどうなるかという感じがする。

さて、yの代数方程式
 \displaystyle y^d + a_1(a)y^{d-1} + \cdots + a_d(a) = 0 … (式1)
が重解を持つための必要十分条件は、上の方程式の判別式 D(x)が0になることだそうである。そこで  D(x)多項式として 0 でないことを示せばよい。
2次方程式の判別式については高校で学んだが、一般次の判別式は次のように定義される。上のd次方程式の解を
 \displaystyle \alpha_1,\alpha_2,\cdots,\alpha_d
とする。
 \alpha_i \mathbb{C}(x)(複素数体  \mathbb{C}xを添加した拡大体)の代数閉包(解全部を含む最小の \mathbb{C}(x)の拡大体のことかな?)の元である。このとき、

 \displaystyle D(x) := \Pi_{i\lt j}(\alpha_i - \alpha_j)^2

を(式1)の判別式という。
この式が多項式として 0 でないことを示すのが目標。
そこで  D(x) \equiv 0 と仮定すると、矛盾が生じることを示す。具体的にいうと、こう仮定すると、 f(x,y)が既約多項式でなくなってしまうことを示す。

 D(x) \equiv 0 と仮定すると f(x,y) K[y]内で少なくとも1つ重解を持つ。それを \alphaとすると、

 \displaystyle f(x,y) = (y-\alpha)^2 \varphi(y),  \varphi(y) \in K[y]

の形に因数分解される。
 \alpha の 体\mathbb{C}(x)上の共役元を

 \displaystyle \alpha_1 = \alpha, \alpha_2, \cdots, \alpha_n

とおく。これは正則写像の被覆写像のアナロジーで考えると、正則写像のある同じ値域の元のファイバーに含まれるような定義域の元と考えればイメージしやすい。すなわち多項式の定める正則写像による像が同じ値になるような元を互いに共役であるという(多分)。

さて、 f(x,y)\mathbb{C}(x)を係数とする  y多項式であるから、体K[y]において

 \displaystyle f(x,y) = \( \Pi_{i=1}^{n} \(y- \alpha_i\)\)^2 \psi(y),    \psi(y) \in K[y]

と分解されることになる。(\alphaで0に写るものは共役元でも0に写る)

このとき、方程式(1)の解  \alpha_1, \alpha_2, \cdots, \alpha_n の置換、すなわちガロア拡大

 \displaystyle  \mathbb{C}(x)(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)/\mathbb{C}(x)
ガロア
 \displaystyle  Gal\(\mathbb{C}(x)(\alpha_1, \cdots, \alpha_n)/\mathbb{C}(x)\)
の元によって

 \displaystyle \Pi_{i=1}^{n} \(y- \alpha_i\)

は不変である。ガロア群の元により不変なものは \mathbb{C}(x)の元なので

 \displaystyle \Pi_{i=1}^{n} \(y- \alpha_i\) \in \mathbb{C}(x)[y]

となる。よって

 \displaystyle f(x,y) = \( \Pi_{i=1}^{n} \(y- \alpha_i\)\)^2 \psi(y)

\mathbb{C}(x)[y]内の等式となる。よって\mathbb{C}(x)[y]内で f(x,y)は重複因子を持ち原始的でない。これから f(x,y)は既約多項式でない。。。


うーん、一度は理解したつもりだったが改めて書き出してみると理解が怪しいのでもう一度考え直しが必要だ。