孤立特異点

点aを除いてaの近傍で正則な関数fに対して、点a を fの孤立特異点という。
孤立特異点には、以下の3種類があるという。

f が  \displaystyle D = \{z \in \mathbb{C} ; 0 \lt \|z-a\| \lt \rho\}で正則であるとき、f を a のまわりでローラン展開して
 \displaystyle f(z) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} c_n (z-a)^n
と書けるが、n が負のベキの係数が0のとき aを除去可能な特異点、係数が0でない負のベキが有限個のとき極、係数が0でない負のベキが無限にあるとき真性特異点というらしい。「らしい」というのはテキストの定義は違っているからで直感的に意味が把握しにくかった。テキストの定義は、上で書いた定義と同値であることが後から証明される。

除去可能な特異点

f が D で正則かつ、a の近傍で有界のとき、 |z-a|\lt\rho(aを含む)で正則関数gが存在して D においては f=g となることが示される(定理4.7)。
このとき f(a) = g(a)とfのaでの値を定義してやると f は |z-a|\lt\rho全体で正則になるように拡張できる。テキストではこのような点a を除去可能な特異点と定義している。どうも最初理解しにくかった。

f がa に正則に延長できるとき除去可能な特異点という

これが除去可能な特異点の定義だろうか。どうもこのテキストは定義がビシッ!と書いてないことが多く混乱する。初心者向けでなく選択を間違えたような気がする。
除去可能な特異点に関してはこの後定理3.2.3(i)(リーマンの除去可能特異点定理)で、

aが除去可能な特異点 ⇔ aのある近傍で fは有界

ローラン展開を利用して証明される。

正整数mと、定数c_1,\cdots,c_mが存在し c_m \neq 0であって、
 \displaystyle f(z) - \sum_{k=1}^{m} \frac{c_k}{(z-a)^k}
が点aを除去可能な特異点を持つ。

上が成り立つとき、a を f の m位の極と呼ぶ。

真性特異点

 0 \lt r \lt \rhoなら  0 \lt |z-a| \lt rのfによる像が全平面で稠密

これが、a が真性特異点であることのテキストにおける定義。ちょっとわかりにくいが、全(複素)平面で 0 \lt |z-a| \lt rのfによる像が稠密ということは、任意の複素数および∞の近傍に、 0 \lt |z-a| \lt rを満たすzに対する f(z)が無限個存在する。いいかえると点列 \{z_n\}がaに近づくとき、近づき方によってf(z_n)がどんな値にも(∞含む)収束させることができ、 lim_{z\rightarrow a} f(z)が確定しない。


定理4.8(p86)で、f の孤立特異点 a は上の3つ(除去可能な特異点、極、真性特異点)のどれかであることが証明される。