Abelの定理(2)
一昨日の続き。
命題2
上では
命題2は容易に示せる。
命題2が成立すると、ディリクレの原理が使えて、と同じ特異性を持つコンパクトリーマン面上の調和1形式が存在することがわかる。
小平「複素解析III」の第6章定理6.19によれば、 は と同じ特異性を持つ 上の Abel微分となる。そこで の極を調べてみる。
を上の有理型関数とすると だからの零点と、の極がの極となる。
とおくと
なので上の関数はを1位の零点として持ち、を1位の極として持つ。それ以外の点では正則。
はの1位の零点なのでの近傍では
(は正則])
と表せる。
ゆえの近傍で
またはの1位の極ゆえの近傍で、
(は正則])
と表せる。
したがっての近傍で
以上からはを1位の極として持ち、その留数は1、を1位の極として持ち、その留数は-1である。
よって
と表せる。
ゆえ
そこで
とおけば、が以下の性質を持つ第3種Abel微分となる:
上の任意の2点に対して、上を除いて正則で、において1位の極を持つ第3種Abel微分が存在する。