前層

第5章に入る。
リーマン面 Xの領域U上の正則関数全体の集合 \cal{O}_{X}(U)は、関数の自然な加法と複素数倍によって\mathbb{C}線形空間とみなせる。領域Uを決めるとそれに付随してその上の正則関数の集合が定まるが、これを抽象化して、一般の位相空間上の前層なるものを定義する。

 X位相空間 \cal{U} Xの開集合全体の族とする。
 \forall U \in \cal{U}に対し \cal{F}(U)なる\mathbb{C}線形空間が定まり、さらに V \subset Uなる任意の U,V \in \cal{U}に対して制限写像と呼ばれる
 \displaystyle r_{UV}^{\cal{F}}: \cal{F}(U) \to \cal{F}(V)
写像が定まって、以下の(1)〜(3)を満たすとする。このとき
 \displaystyle \cal{F}:= \{\cal{F}(U),r_{UV}^{\cal{F}}\}
 X上の(\mathbb{C}線形空間の)前層と呼ぶ。
(1)  \displaystyle \cal{F}(\emptyset):= \{0\}
(2)  \displaystyle r_{UU}^{\cal{F}} = id_{\cal{F}(U)}
(3)  \displaystyle W \subset V \subset U \Rightarrow r_{WU}^{\cal{F}} = r_{WV}^{\cal{F}} \cdot r_{VU}^{\cal{F}}

 f \in \cal{F}(U)に対し r_{VU}^{\cal{F}}(f) = f|_{V}と思えばわかりやすい。制限写像の名前はここから来ている。